訪問看護ノート 1999.2.11/cn19990211-1 五十嵐 直敬 緩和ケアの基礎知識 1.「ホスピス」とは  1)語源と歴史    ラテン語 hospitium 「暖かく迎える場所」 hospitalの語源に通じる    中世のキリスト教会による巡礼者の休息所に由来すると言われる    近代ホスピス = シシリー・ソンダースによる 女史は看護婦から医師になった    !ある患者の「とにかく痛みを取って」という言葉がきっかけと言われる     1967年 ロンドン セント・クリストファー・ホスピス ソンダース女史による     1973年 大阪 淀川キリスト教病院ホスピス(ケア) 柏木哲夫先生による     1981年 聖隷三方ヶ原ホスピス 国内初の独立施設     1989年 緩和ケア病棟入院料 緩和ケアについての診療報酬が認められた     1997年 全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会によるガイドライン策定  2)意味    (終末期)医療の理念 その理念に基づく実際的方法   !施設を意味してはいない > ホスピスは場所を選ばない 家庭 地域・・・    最近は終末期医療以外にもその理念を応用しようという考え方が出ている 2.「緩和ケア Palliative Care」とは  1)歴史    日本ではこの3〜4年で「ターミナルケア」 > 「緩和ケア」と呼び始めた    !単なる「末期医療」から「全人的に苦痛を緩和するケア」の意識の高まり?  2)WHOの定義    治癒を目的とした治療の効果がない患者に対する、全人的で「積極的な」ケア    痛みや他症状のコントロール、精神的・社会的・霊的な問題のケアを優先    疾患の初期でも、癌治療でも活用される    !決して治療中止ではない! 治療の方向性が変わるだけ 3.ホスピスの理念「トータルペイン(全人的痛み)の緩和」の理解  1)苦痛の種類   a)物理的苦痛     疾患による苦痛(癌性疼痛、頭痛、腹痛など)     人為的な苦痛(手術・注射などの治療操作などによる)     二次的苦痛(臥床による局所圧迫痛、関節拘縮による痛みなど)   b)精神的苦痛     不安 「何が起こるのか 苦しむのか 死ぬのか」     恐怖 「死ぬのは怖い 苦しんで死ぬかも」     苛立ち 「治療も効かない 治らない」     怒り 「どうして私がこんな病気に」     うつ状態 「もう何もしたくない・・・」     焦り 「時間がない あれもしなくては これも」     病気であることは精神の状態をマイナスに変化させる それが辛い     「こんな気持ちは いつもの自分じゃない」   c)社会的苦痛     経済的問題: 働けない 収入がなくなる     職業・社会的地位の問題: 働けなければ失職 地位を失う     家族関係の問題: 大黒柱・働き手 > 世話される人へ 立場の激変     人は他人・社会と、モノと気持ちのやり取りによって生きている     他人・社会との関係のバランスが崩れることは・・・   d)霊的苦痛     生・死への思い「人はなぜ死ぬのか 私はなぜ今、死ななければならないのか」     罪責感「癌でこんなに早く死ぬのは 私が何か悪いことをした報いなのか」     宗教上の問題 死後の世界・魂の行方への思い     !人には答えられない、解決できない問題を指す  2)苦痛の影響    頭が痛かったら 腹が痛かったら 悩みや心配があったら 仕事は 生活は?    苦痛は「その人らしい生活」の邪魔 > 取り除けば「その人らしく」いられる  3)ケアの対象者(苦痛を受ける人)と時期    現に苦痛を感じている本人 死によりすべては終わる     >死までがケアの対象期間     !肉体的死とイコールではない    身内が、愛する人が死ぬこと 辛いのは誰? > 家族や関係者    周囲の人は生き残る > 患者の死後 淋しさ 残された問題     > 家族などは患者の死後もケアを必要とする       = ビリーブメントケア(遺族の心のサポート)  4)苦痛緩和への取り組み「HOSPICE」   H)Hospitality おもてなし、アメニティの確保     スタッフのサービス:      素敵な笑顔 気持ち良い言葉遣い・態度・礼儀 専門的知識と技術     用意されるもの:      おいしい食事 風呂の楽しみ 酒もタバコも節度をもてばOK      快適な部屋(プライバシーが保護された) 快適な環境(音楽 絵・・・)     自由とプライバシーの確保・保護:      面会・外出・外泊は基本的に自由  "Don't Disturb"−邪魔はしない     !「あなたの居場所。あなたらしく」の実現   O)Organized Care 組織的ケア「all for one: 皆があなたのために」     チーム結成: 医療専門職だけでなく「対象者が必要とする人」すべて            医師 ナース MSW カウンセラー 宗教家 調理員            友人 地域の方 ボランティア「何かをもたらしてくれる人」     情報の共有: 医療チームの全員が必要な情報を得るために 記録 話し合い     合意の形成: 皆が考えを一つにして尽くす 対象者の意思 医療者の考え     S)Symptoms Control 苦痛・不快症状の「コントロール」     疼痛の緩和: 鎮痛剤の正しい使用 特にモルヒネ     不快症状の緩和: 適切な薬剤の使用・治療とケア   P)Psychological Support 精神的支援「いつもあなたのそばに」     痛みは全人的 物理的以外の痛みをどう解決するか     問題解決に必要なモノ・人・知恵の確保・提供     「一人で苦しまないで」 ただそばにいることも「あなたのためにできること」   I)Individualized Care 個別性を尊重したケア「あなたは、あなたらしく」     人はその人なりの生き方・考え方を持っている それが「自分らしさ」     元気なら「自分らしく」生活できる しかし病気になったら・・・     人はどう生まれるかは決められない     どう生きるか どう死ぬかは決められるはず しかし実現できるか?     「あなたらしさ」を護るためには そのためのケアは   E)Education 共に成長し続けるための教育     スタッフに:より良い医療・ケアのために 専門知識・技術           センスを研ぎ澄ますために 芸術 遊び 様々な体験     対象者に: 生と死の意味を考えること 健康とは 死とは より良い生とは           「完全燃焼」のためには できること すべきこと 3.緩和ケアの概要   1)誰を     苦痛を感じている本人 = 患者(末期癌 エイズ 難病・・・)     本人の苦しみを感じている・影響を受ける、家族・周囲の人   2)いつどこで     対象者が「その人らしく」いられる場所 そこを「ホスピスにしていく」     対象者の苦痛が続いている期間 本人の死後も関係者へのケアは続く   3)誰が     対象者の苦痛・問題を解決するための力を持った人     皆で知恵と力を合わせてケアする   4)何をすべきか    「痛み」はその人に関わるすべての問題が関係して起きている > 全人的なケア     物理的苦痛 < 正しい知識と技術に基づく治療 あきらめはしない!     精神的苦痛 < 傾聴すること 心の痛みを理解しようとすること             そばにいること「Stand-By」 誰でもできるはずのこと     社会的苦痛 < 様々な制度の活用 関係の調整仲介             キーパーソン: MSW 福祉職 家族 友人 上司     霊的苦痛  < 誰も答えられないこと しかし解決は必要             人類文化が生んだ対処法の一つは宗教だが   5)どのように ・・方法論は個別に。 以上