大阪大学医学部(臨床遺伝子治療学)では2001年、下肢の血管が閉塞・壊死し最悪の場合には下腿壊死・下肢切断を余儀なくされる難病「閉塞性動脈硬化症(ASO)」の遺伝子治療に成功しました。閉塞性動脈硬化症は、バージャー病またはビュルガー病としてよく知られています。
大阪大学の遺伝子治療は、HGF(Hapatocyte Growth Factor: 肝細胞増殖因子、身体機能を司る蛋白質の一種)を遺伝子治療により患部組織で産生させて、血管を再生させて治療するものです。
HGFは肝臓を再生させる物質として発見されましたが、近年、肝臓以外の組織・器官の再生にも働くことが分かり、血管を再生させるために利用したのです。
大阪大学の遺伝子治療では、HGF遺伝子をドーナツ状に加工した「プラスミドDNA」をベクターとして使います。
このHGF遺伝子プラスミド・ベクターを血管が壊死した患部(下腿)の筋肉に期間をおいて数回、場所を変えながら注射します。すると、治療開始一ヶ月後頃から患部に新しい血管が再生し始め、それに伴い血行が改善され下腿や足趾等の壊死や潰瘍が治癒していきます。
もっとも劇的な症例では、歩行不能となり車椅子で入院した患者が、治療開始から数ヶ月で独歩で退院するまでに回復した例もあります。
この治療法は、遺伝子治療によって組織を再生させる点で、再生医療とも言えます。現在、遺伝子治療と再生医療は非常に密接な関係を持ち始めており、この治療法は非常に重要な意義があります。
大阪大学では、同じく血管疾患である心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患への応用も準備を始めています。また、他大学などと協力して、パーキンソン病などの神経変性疾患(神経難病)などの遺伝子治療にむけての基礎研究も始めています。
このHGFによる遺伝子治療は、ベンチャー企業「アンジェスMG社」として事業化され、さらなる研究と普及が目指されています。
最先端の医学、研究は、事業化・産業化され広く社会の隅々まで行き渡り、病苦から人を救ってこそ、意義があります。そのために、志ある遺伝子治療研究者たちは、基礎研究と同時に、その事業化を真摯に考え、取り組んでいるのです。
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